*** 転送速度/モードの「55互換(/92互換)」 ***


 Windowsの55互換ドライバでは通常、DMA転送しか行えません。これは、各社のCPU転送モードの規格に互換性がないためです。バスマスタ転送も然りで、そういう意味ではDMAモード転送用ドライバという意味で55互換と言われていることになります。WD33C93互換のSCSIチップを搭載したCバスSCSIであれば、ソフトから見て基本的にDMA転送はハード的にもドライバも55互換と言えそうです。実際、Windows95/98では、DMA転送用では55/92ドライバ共通で、92のI/O転送には専用ドライバが用意されています。

 ただし、実際にサードパーティ製バスマスタSCSIに使ってみると55ドライバでもバスマスタ並みの速度が出ることがあります。原因はよく知りませんが、一説ではこれもOS/2対策としてソフトからはDMA転送に見せて内部ではバスマスタ転送しているのかもしれません。

 ちなみにCPU転送は、メーカーによってI/O転送、FIFO転送、バッファモード等とも呼ばれます。BIOSのOEMの関係か、同じメーカーでもSCSIボードによって呼び方が違うことさえあります。転送の語長を8ビットから16ビットにして高速化したワードFIFO(WIO)と呼ばれるものもあります。これらやバスマスタ転送は、55互換のDMA転送よりも高速と言う意味で92互換と言われることがあるかもしれませんが、92のCPU転送とはハードもドライバも互換性はありませんから、厳密な表現では無さそうです。唯一の例外は、PC-9821A-E10とPC-9821N-U05で、これらは恐らく92ボードとFIFO転送規格に完全互換性があるものと思われます。
 逆に、DMAを使うバスマスタ転送のSCSIボードが、FIFOやSMITと比べてDMA転送に近い意味で55互換呼ばわりされることもあるかもしれません。その場合、もちろんFIFOやSMITが92相当と呼ばれるでしょう。

 たとえば、旧NECホームエレクトロニクスのゲームアクセラレータボードPC-FXGAの場合は、CD-ROMまわりについて92または相当品が必須とありますが、これは恐らく転送速度が中心の意味だと思われます。バスマスタ転送ボードや各社FIFO転送ボード、ATAPI-CDROMでも動作はするようですが、DMA転送のSCSIボードでは動画再生でエラーを起こしました。もっとも、バスマスタで動作保証をしていないあたりは別の理由もあるかもしれません。個人的には、FXGA自体が同じCバスボードということから、DMAの関係でバス占有されるとかえってデータが途切れる危険もあるのかもしれないと予想してみました。そういう意味ではこの場合、バスマスタは55互換なのかもしれません。
 余談ですが、FXGAで55が保証外なのは転送速度が理由に間違い無いとしても、FIFOである100ボードも保証外である点は、SCSI-1の互換性が重視されていたためらしいですが、恐らく当時のNEC製SCSI CD-ROMドライブを使ううえでのハードやドライバがそれだけ55ボードのハードウエアを想定していた都合ではないかと個人的には考えています。

 なお、先に述べたNTの92相当ドライバは、CHSパラメータまわりの92互換を意味していると思われますので、92以外で使えることがあれば、恐らくDMA転送になっていると予想されることから、この意味では紛らわしいです。

 また、55非互換チップのデメリットはWindowsドライバを独自に用意しなければならない点ですが、95の時代になると、まともにI/O転送やバスマスタの速度を生かすには、やはり専用ドライバが必要になってきました。だとすればBIOS互換さえ気をつければ、非互換チップ搭載のデメリットはほとんどなくなってきます。そのせいか、NEC自身もAdaptecからのOEMで92ボードに代わり100ボードをSCSI-2ボードとしてラインナップし、92に代わる標準化を目論んだようです。Windows2000(2K)では、100ボードのドライバはSP2か3のころまでOS標準で提供されていましたが、55/92の2Kドライバは存在しませんでした。


KAZZEZ

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