*** CHSパラメータの「55互換/92互換/非互換」 ***


 しかしBIOSにおける互換性で最も問題となったのは、HDDのフォーマット形式(シリンダ数(C)/ヘッド数(H)/シリンダ当たりのセクタ数(S))でしょう。通常「55互換か92互換か」と言えば、本来これを指しているものと思われます。他の意味では「92互換」があまり重要な意味を持っていないためです。ただし、他の意味での55互換を含めて92互換と表現されることは十分考えられます。

 まず、純正の55ボードでは、HDDのCHSパラメータはすべてHDDに問い合わせて取得されます。ただしHDDの挙動によっては誤ったCHSデータを返すことがあるため、NECはHDDのベンダ名をチェックし、55方式でも特に問題なくCHSを取得できるHDDには「NEC」で始まるベンダ名を付け、それ以外のHDDは使えなくする、ということを決めて誤認を避けたようです。これはサードパーティにも許可され、「NECITSU」「NECODA」などユニークなベンダ名ができたことは言うに及びません。

 サードパーティではCHSデータの誤認によってHDDの総容量が誤認されるのを防ぐため、先に総容量を取得し、それをHとSで除算してCを決めるという方式にしました。この時、HとSをHDDに問い合わせて求めれば、必ずしも55互換でフォーマットできるわけではないにせよ、「55互換」と言われる由縁にはなると思います。

 一方で、HとSはBIOS側の独自の判断で決め、HDDにはCHSを問い合わせないという方式も存在しました。これでは各社ばらばらのフォーマットになるのですが、後に92ボードでも採用されたことから、この方式のSCSIを、先程の55互換フォーマットに対して「92互換(フォーマット)」と呼ぶことができます。
 しかし後に92ボードの8ヘッド32セクタ固定という取り決めが標準フォーマットとして普及したため、それと互換性の無いヘッド/セクタ数を採用したSCSIは必ずしも92互換と言うことはできなくなってしまいました。むしろ55互換に分類されることすらあるほどです。これは、55時代の各社ばらばらなHDDフォーマットという意味では必ずしも間違ってはいないのですが、55フォーマットと互換性があるわけではないので気をつけなくてはなりません。ちなみにTEXAのSCSIでは、4ヘッド64セクタという、92と幾何的に互換性のあるフォーマットが採用されていましたが、これも92互換フォーマットと見なせるでしょう。

 なお、92ボードではベンダ名にNECを返す従来HDDについては55フォーマットでアクセスしているため、この場合も92ボードは55互換と言うことはできます。

 また、WindowsNTでは55互換SCSIを92相当SCSIとして検出しますが、これはNTがシステム上92フォーマットのHDDしか扱えず、55相当SCSIとして検出するとHDDが扱えないので、サードパーティ製のSCSIを認識するために本来の55互換の意味で92相当SCSIという名前を付けたのではないかと個人的には予想してます。

KAZZEZ

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