*** ATX電源を非ATXな9821に使う変換アダプタ ***



↑市販のATX電源用の変換コネクタでは
3.3V信号が使われていないので、そこに
工作用のピンを植えることでPC-9821で
使われた3.3V電源コネクタを増設できる。


PC-9821での電源の問題

 独自色が強かったPC-9821シリーズも、AT互換機の台頭に対抗する為には、AT互換機に近い仕様にならざるをえませんでした。特にその変貌が大きかったのは95年5月のPC-9821Xa7/9/10ではないかと思います。この年はWindows95の発売に合わせてかPC95規格が取り決められ、95対応を打ち出したXa7/9/10も、従来機と比べて大きな変貌を遂げ、CRT出力が3列のコネクタになり、9ピンの第二シリアルポートが付くなど、AT互換機に近付いた仕様となりました。
 ここではそのすべては述べませんが、大きな仕様変更があった直後機種ですので、例によって後からさまざまな不具合が知られています。そのひとつが電源まわりでした。詳しいことまで存じませんが、調べてみると電源容量不足が指摘されているようです。ただでさえこのような古い機種は電源が寿命に達しやすいことを考えますと、代わりの電源を確保したほうがよさそうです。
 ところがこの頃採用された電源はまだATX互換品ではなく、いわゆるAT電源に独自の3.3Vコネクタを増設したものでした。つまり、AT互換機の電源には近いけれども、実際には他のPC-9821から取った純正電源でなければ役に立たないのです。ついでに言えば、AT電源を改造しようにも、すでにそれすら入手困難です。


市販の電源変換ケーブルを改造

 この問題を解決するには、タワー機のような電源容量の高い9821から、同じタイプの電源を採用している機種を探し、交換するという手が無難ですが、それも今となっては簡単ではなくなりつつあります。どうにかしてAT互換機の電源を用いて改造する手段を利用できればそれに越したことはありません。  要はAT電源に何らかの手段で3.3Vコネクタを補完すれば良いのですが、ここではこの二つの問題を、ATX電源をATマザーに繋ぐ市販の変換アダプタによって一気に解決することを考えてみます。というのも、この手の変換アダプタはATX電源の3.3V端子が活用されていないのです。そんなわけで、ここに工作用の電源ピンを増設して新たにPC-98向け3.3V端子を増設してしまえば良いのです。なお、この独自コネクタは他のAT電源コネクタと同じタイプですが、切り欠き(爪)の位置が違っています。なおその小さな爪の並び(大きな爪の反対側)を手前に見て、ケーブルを上(端子を下)に見たとき、右側の三本がGNDと導通がありました。そこにGNDを、残りの左三本にATX電源側の+3.3Vを接続したところ、うまくPC-98のマザー(G8VER)でも動作しました。とは言っても筐体に収まるかどうかは試していません。特に電源スイッチはうまく固定できるか心配です。とりあえずのマザーテスト用にATX電源が利用できるようになるのは便利かもしれません。


↑AT電源の2コネクタだけ繋いでも動作しないが、
3.3Vコネクタを増設することで動作した。
なお電源SWの固定可否については未確認。

 なおATX電源の中には、PC-9821の3.3V電源と非常に良く似た3.3V電源ソケットを持つものがあります。サーバなどで使われているようですが、これはPC-9821の3.3Vコネクタとはピン互換ではありませんので、そのまま使用しないように注意する必要があります。コネクタからピンを抜き、適切な場所に植え替えてやれば、PC-98でも動作可能という話です。ただし、GNDピンの数と3.3Vピンの数が異なっている点には気をつける必要があります。とはいえ、同じ電源ピン同士は導通が有るらしいので、適切に処理してやればとりあえずは動くものと思われます。GNDピンも必ず接続します。


応用可能な機種について

 このタイプの電源が使用されているのは、PC-9821がWindows95機として広く普及していた時代のデスクトップ機種であり、95年中盤から96年いっぱいまでの主力機種が該当しそうです。ジャンクとしては比較的ありふれていたものです。詳しい調査はエマティさんのページに研究発表がありますが、大まかなことを言えばVLSI社のWildcatチップセットを用いた機種(いわゆる山猫)と、IntelのTriton430FX(トライトン→渡来豚より、一部で豚と呼ばれる)チップセットを用いた機種が該当します(ここではまとめて豚猫機と呼びます)。XaシリーズとValusterVシリーズのうち、1-2桁の型番を持つ機種がほぼ該当するでしょう(青札V16などの一部例外あり、あとXvとXcの初期シリーズも含まれる)。


i-RAMへの応用

 ATX電源コネクタが使えるということは、スタンバイ電源が利用できるということでもあります。そこで、電源だけ使うPCIボード用の電源変換アダプタATX電源に繋ぐアダプタを介して繋いでみました。もちろんそれでi-RAMを動かしてみます。


↑電源だけ使うPCIボード用の電源変換アダプタを使えば、
PCIが1基しかないマザーでもi-RAMが動作可能。


↑電源を切っても、スタンバイ電源供給を
示すLEDが点灯していることが分かる。

 というわけで、無事にi-RAMは動作するようでした。ただ、PCIが一基しかないせいなのか、SATAインターフェースボードのBIOSリソースがうまく振られずに起動しないことがありました。うまく起動する場合、3112の場合でREAD 100MB/Sくらいは行くようです。CPUパワーで劣るせいかPentiumII搭載のRaシリーズよりは若干ですが遅めでした。
 もちろん、ATX電源からスタンバイ電源を供給すれば、物理的な電源スイッチを切ってもスタンバイ電源で待機可能でした。本来電源を切ればどうやっても待機電源の得られないAT電源または相当の機種で、i-RAMがスタンバイ電源付きで利用できるようになる意義は大きいのではないかと思われます。
 ある意味、AT電源(相当)の機種でATX電源が利用できる意義が大きかったのかもしれませんね。


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