*** 電源だけ使うPCIボード用の電源変換アダプタ ***
〜をATX電源に繋ぐアダプタ
↑電源だけ使うPCIボード用の電源変換アダプタを、
ATX電源に繋いでスタンバイ電源を得るアダプタ。
+12Vと+5Vは普通に4ピン電源から取る。
3.3Vスタンバイ電源と-12Vを増設してみる
そんなこんなで、どうにか普通の4ピン電源に、i-RAMやSE64-IDEを増設できるPCIソケットを増設することに成功しました。しかし、+5Vと+12Vしか来ていない内部4ピン電源が元では、3.3Vはどうにか生成できても、-12Vやスタンバイ電源は工面できません。そこで、用途に応じて内部ATX電源にも繋げるようにしてみました。これまでの手軽はそのままにしたいですから、簡単なソケットだけ増設し、ATX電源から分岐した線を必要に応じて接続できるように改造してみました。
↑コンパクトさを損なわないように、小さな端子を追加して
A14(3.3VSB)とB1(-12V)をGNDと共に外部に引き出せるようにした。
降圧のためのダイオードは内蔵させたので5VSBを直接接続できる。
-12Vはi-RAM等では使われておわず、現時点で何の役に立つか不明。
写真では4ピンの小型コネクタを増設しています。内訳は、真ん中の2本がGNDで、残りは5Vの待機電源と、-12Vです。5Vの待機電源はPCIソケット脇に設置した2本のダイオードで降圧して3.3Vの待機電源すなわちA14ピンに接続しました。-12Vは一応配線してありますが、i-RAMもSE64-IDEも-12Vは使っていないため、動作検証ができません。とりあえず、関係無いピンとショートしないように細心の注意を払いましょう。実験用の試作品であるためピンが剥き出しですが、最終的には全体を、ボードを差す切れ目だけ入れた熱収縮チューブに入れてしまおうかと考えています。
ATX電源を分岐させるアダプタ
次に、市販のATX電源延長ケーブルを買ってきます。そのうえで工作用のATX電源コネクタとピンを用意しました。これなら多少工作を省くことができます。ATX電源延長ケーブルをやや短めに切り、工作用のピンにはんだ付けしていきます。その際に分岐すべき線には追加のコードをはんだ付けしておきます。そして向きや雌雄に注意しながら、工作用のATXコネクタに差し込んでいきます。当然ながらピンアサインを間違えないように細心の注意を払います。20本のピンの加工は慣れないと結構大変かもしれません。
最初から短めの延長ケーブルを用意し、線の途中で被覆を剥き、必要な線だけはんだ付けするほうがはるかに簡単ですが、そのあとの絶縁が面倒かもしれません。ここでは大抵の電源は同じ電圧ピンは内部でショートされているという仮定で、GNDは単に位置的なセンスから適当に選んでいます。
↑製作したATX電源アダプタ。
おまけでリセットボタン端子を付けた。
なお、PC-98とAT互換機では18番ピンの扱いが若干異なっているらしく、PC-98ではNCとなっています。大抵は直結しておいて問題無いようですが、機種によっては接続しないほうが良い場合もあるようです。その場合は18番ピンは接続しないようにしておくとPC-9821でも(物理的に設置できれば)汎用のATX電源が使えるようになるでしょう。ただし、大抵は背面の電源コンセントのソケット形状がPC-9821のバックパネルの金具と必ずしも合わないことが知られています(対策は可能ですが)。
ついでにリセット端子も分岐
本題とはあまり関係無いかもしれませんが、せっかく電源端子を改造するのですから、PowerGood線とそのとなりのGNDをショートできるリセットスイッチを設置できるようにしておくと便利そうです。リセットといってもいったん電源を切るのにも相当しますのでメモリカウントが遅くなるなど注意は必要ですが、ATX電源のマザーではリセットボタンがサポートされていないことが少なくないですから、ついでに設置できるようにしてみました。もちろんPL-Pro/II+FCPGA2下駄+TualatinでのPowerGoodの起動阻害にも使えるかもしれません(うちでは試す環境がありませんが)。市販のリセットスイッチはメスコネクタですが、だからといって電源側をオスコネクタにすると関係無い時ショートしそうですから、あえてこちらもメスコネクタを設置しました。市販のピンヘッダを介して接続できるようにします。スイッチでショートするだけですから、極性は区別しません。スイッチの設置先ですが、PCIブラケットの開きか、通風孔に設置できるのではないかと思います。私はとりあえずPCIブラケットマウンタでPCIブラケットを前面に持ってきて、PCI蓋に普通についている丸穴から出してみました。リセットスイッチの無いPCでは思いのほか便利でした。言うまでもありませんが、間違って触れないように気をつけましょう。
↑リセット端子は危険の無いようにメスコネクタにしたので
市販のリセットボタンは市販のピンヘッダを介して繋ぐ。
ピンヘッダというよりはジャンパポストとでも言うべきか。
ATマザーでもスタンバイ電源対応!!
では件の電源PCIアダプタと接続してみます。写真ではi-RAMを接続しています。小型のATX電源を実験に用いていますが、とりあえずの実験なので手動でATX電源をONにする必要がありました。これには市販のAT電源コネクタに変換するケーブルを用いました。これはATX電源に物理的なスイッチを増設できますので、マニアな方々は電源増強あるいは外付け筐体で大量のHDDを増設したりする目的で、単なる電源スイッチとして利用されることもあるようです。しかしよく考えてみれば、これはそのままAT電源のマザーに使えます(あたりまえ)。さらに写真では、AT電源変換ケーブルの電源スイッチが切れているにもかかわらず、ちゃんとi-RAM上でスタンバイ電源供給を示すLEDが点灯しています。つまり、PCI2.0でスタンバイ電源に対応していないような古いPCでも、普通にi-RAMが利用できることを示しています。もちろん貴重なPCIスロットを塞がずにすみますから、古いPCにとっても思いのほか便利な仕様になりました。
↑ATX電源をATマザーに繋ぐアダプタで強制的に電源スイッチを付けた。
電源オフ時もi-RAMではスタンバイ電源が供給されていることを示すLEDが
点灯し続けることから、ATマザーでもスタンバイ電源が利用できそうだ。
非ATXなPC-9821の場合
ところでPCIの少ない古いPCといえばやはりPC-9821ですが、ATX電源になる前の主なPCI付き9821では、独自の3.3Vコネクタを持っているため、通常のAT電源では使用できません。市販のサーバ用の電源の中には3.3V用コネクタを持つものがありますが、PC-9821のそれとはピンアサインが異なります。コネクタ形状は同じですが、切り欠きが違ったかもしれません。しかし、適切にピンを植え替えてピンアサインを合わせれば、PC-9821でも使用できるという報告がありました。3.3VとGNDについて一部ピンの数は違いますが、GNDや3.3Vの同じ端子同士は前述の通りマザーや電源内で導通があることを確認すれば、そう問題では無さそうだという話でした。だとすれば、3.3V端子付きのATX電源を改造すれば、PC-9821でも同様にi-RAMをスタンバイ電源付きで使用することが出来そうです。そのほか、AT電源コネクタの変換ケーブルには3.3V端子が未接続となっていますから、ここに新たに9821用3.3V端子を増設するという手もありそうです。その場合、GNDは同様に分岐して用意する必要があります。
↑V13のマザー。ATX電源をATマザーに繋ぐアダプタを改造し、3.3Vコネクタを増設すれば、
いわゆる豚猫マザーの非ATX電源のPC-9821でもスタンバイ電源付きでi-RAMを利用できた。
スタンバイ電源が供給されていることを示すLEDが点灯していることが分かる。
ATX電源を用いた外付け動作
ATX電源アダプタということで内蔵用途を想定してきたのですが、写真では実験用として外付けで組みました。玄人志向SerialATA1.5-PCIのように内部SATA端子をそのまま外出しできるSATAインターフェースを使えば、これはこれでそのまま外付けで使うことが出来ました。もちろん市販のSATA外出しブラケットを使っても良さそうです。小型のATX電源をお持ちであれば電源からi-RAMまでを適当なケースに入れてしまえば無難かもしれません。もちろんi-RAMの発熱対策は必要ですが。
↑ATX電源+AT電源変換アダプタとSerialATA1.5-PCIを用いて
i-RAMを外付けにしても、スタンバイ電源付きでちゃんと動作した。
これまで想定していた外付けでは、外付けの電源(の一部)をONにしたままで運用するというものでした。それはそれでUPS(無停電電源)と組み合わせるなどで停電時のバッテリ寿命を延命するなどの措置は取れるでしょう。しかし、今回のように実際に外付けの電源を切った状態で待機電源が利用できてデータが保持されるというのが思いのほか便利に感じました。もっとも、電源タップなどで一括給電するシステムの場合は当然ながらi-RAMにも給電されなくなるので注意が必要です。これはマザー上のPCIスロットにi-RAMを増設した場合も同じですが、たとえばPC-98の連動サービスコンセントに外付けでATX電源を接続してi-RAMを繋いだ場合などは忘れがちと思われますので、特に注意しましょう。
前回の電源シャットダウン時の12V保持対策の話もそうでしたが、i-RAMは本来外付けでの用途は想定されていないというのが良く分かりますよね。外付けにおける問題はユーザー自身で解決していかなければなりません。
当然ですが今回のATX電源アダプタは、内蔵のATX電源とマザーの間に挟む形でもちゃんと動作しました。次回はこれらのアダプタの応用例についてまとめたいと思います。
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