*** H98のCRTコネクタ ***


特殊な複合コネクタ

 H98には複合29ピンなどと呼ばれる特殊コネクタがあり、アンフェノールハーフピッチ26ピンと同軸端子3本が同居しています。同軸端子にはそれぞれのGNDがあるので複合32ピンと呼べなくもありません。この形のCRTコネクタはHITACHIあたり(?)のCRTでも見たことがありますが、互換性があるかどうかは不明です。なおワークステーションなどで用いられる複合コネクタはピンタイプなので互換性はありません。

複合29ピンの機能

 H98の複合29ピンの信号内容はマニュアルやWEB上に記載がありますが、マルチメディアを見越してか、様々な機能が集約されています。具体的には、
・CRT出力
・キーボード
・音声出力
・電源SW
などです。つまり専用CRTがあれば、卓上にはCRTとキーボードだけを設置し、本体を隔離することもできます。専用CRTからは音声も出力でき、ボリューム調整もついているという具合です。
 なお、キーボードや電源SW、スピーカーはH98本体にもついていますので必須ではありません(*)が、CRTコネクタはこれだけなのが厄介です。専用CRTが無い場合、何らかの変換コネクタで普通のCRTを繋ぐことになります。

(*) N5200シリーズでは、H98に近いものであってもキーボードコネクタが付いていませんので、専用CRTからしかキーボードを繋ぐことができません。

マルチシンク機能??

 さらに、旧MACのディスプレイ変換コネクタに解像度選択スイッチが付いていたのと同様に、H98は専用CRTの種類を自動感知して適切な周波数をCRTに出力しています。このとき専用の信号線を使っているのです。H98では、
・ノーマルモード:水平24.8kHz/垂直56.4Hz
・ノーマルモード:水平31.5kHz/垂直70Hz
・ハイレゾモード:水平32.8kHz/垂直79Hz(インタレース)
・ハイレゾモード:水平50kHz/垂直60Hz
の4つの出力モードがあります。
 ここで、よく見かけるPC-H98-K04ケーブル(複合29ピン←→D-SUB15ピン2列)では、特にその処理は行っていないようで、デフォルトのノーマルモード時:水平24.8kHz/垂直56.4Hz、ハイレゾモード時:水平32.8kHz/垂直79Hz(インタレース)が出力されます。最近のディスプレイではこの画面を映せないことがあるので、できれば9821と同じ31kHzや、ノンインターレースのハイレゾ画面を出力したいところです。

 H98の画面の周波数は起動後にソフトウエアでも変更できます。しかし、セットアップメニューやリファレンスディスクの設定のためには起動時から特定の周波数にしておく必要があります。そのためには前述のCRTコネクタ内の信号線を適切に処理してやればよいことになります。

 ナナオのP4Aという短い変換ケーブルがその機能を持っており、H98を使いつづける方たちの間で重宝されています。また、NEC純正のオプションとしてマルチシンクアダプタPC-H98-U03というものがありました。これは持っていないので詳しいことは知らないのですが、H98用ディスプレイを普通の9821に使うこともできるなど、汎用性のあるものかもしれません。どちらにしても、入手は困難でしょう。

目的の信号線を探す

 そこでまず、H98の複合29ピンのピンアサインを調べます。手元にマニュアルが無いので詳細は他所のWEBに任せますが、おおよそピンの数え方は以下のようであると思われます。

 ここで、このピンアサインにはリザーブ(予約)となっている部分が多く見受けられます。しかしピンアサインの分布から考えて、19-26はキーボードのピンアサインそのものと考えられます。また、1-6と14-16もCRTまわりと考えられ、少なくともアナログRGB15ピンに変換するK04ケーブルを調べる限り、5/14/15/16ピンが、それぞれDsub側の9/7/10/11と導通がありました。これらはアナログRGBピン定義ではそれぞれSYNC/YS/AUDIOL/AUDIORとなっています。さらに7/8が電源SWまわり、17/18が音声まわりということで、予約となっている9-13ピンが怪しいという結論になりました。
 さらに、たまちゃん氏から寄せられた情報で、前述のナナオP4Aにおいて、10/11/12が4(GND)と導通があることがわかりました(http://hyper98.hp.infoseek.co.jp/PC/H98/)ので、この5本のピンを調べてみることにしました。

マルチシンク信号線(?)の調査結果

 たまたま複合29ピンの切れ端が手に入ったので、線を引き出して変換ケーブルを作ってみした。いくつかの信号線にジャンパピンを設置しておきます。

 以下、5本の信号線をそれぞれGNDにショートするか開放かで32通りです。9-13について、O:開放、G:GNDにショート として、リセット時に出力される水平同期(H)、垂直同期(V)の周波数をテスタで測ったものを示します。なお、用いた本体はH98model90と見られるジャンクです。
9←→13	H:ノーマル	V:ノーマル	H:ハイレゾ	V:ハイレゾ	備考
OOOOO	24.8k	56.4	32.8k	79
OOOOG	31.5k	70	(NG)
OOOGO	31.5k	70	32.8k	79
OOOGG	(NG)		(NG)
OOGOO	(NG)		(NG)
OOGOG	31.5k	70	(NG)
OOGGO	(NG)		(NG)
OOGGG	(NG)		(NG)
OGOOO	(NG)		(NG)
OGOOG	31.5k	70	32.8k	79
OGOGO	31.5k	70	32.8k	79
OGOGG	31.5k	70	50k	60
OGGOO	31.5k	70	(NG)
OGGOG	31.5k	70	(NG)
OGGGO	31.5k	70	50k	60	←P4Aと同じ?
OGGGG	(NG)		(NG)
GOOOO	24.8k	56.4	32.8k	79
GOOOG	24.8k	56.4	32.8k	79
GOOGO	24.8k	56.4	32.8k	79
GOOGG	24.8k	56.4	32.8k	79
GOGOO	24.8k	56.4	32.8k	79
GOGOG	24.8k	56.4	32.8k	79
GOGGO	24.8k	56.4	32.8k	79
GOGGG	24.8k	56.4	32.8k	79
GGOOO	24.8k	56.4	32.8k	79
GGOOG	24.8k	56.4	32.8k	79
GGOGO	24.8k	56.4	32.8k	79
GGOGG	24.8k	56.4	32.8k	79
GGGOO	24.8k	56.4	32.8k	79
GGGOG	24.8k	56.4	32.8k	79
GGGGO	24.8k	56.4	32.8k	79
GGGGG	24.8k	56.4	32.8k	79

ここで、(NG)はPCが起動せず、変な周波数を出して電源LEDを点滅させるという妙な状態でしたので、設定禁止だと思います。9をGNDにショートすれば10-13に関係なく、9-13すべてオープンのときと同様にノーマル24kHz/ハイレゾ32kHz(インタレース)となりましたが、それ以外は特に規則性は分かりませんでした。

 結果としてこれらのピンを単純にGNDにショートさせるだけで、先に示した4種の画面モードを設定できることが分かりました。一つの設定でのノーマル/ハイレゾの画面モードの組み合わせとしては、
・ノーマル24kHz/ハイレゾ32kHz(インタレース)
・ノーマル31kHz/ハイレゾ32kHz(インタレース)
・ノーマル31kHz/ハイレゾ50kHz
・ノーマル31kHz/ハイレゾ起動不可
・ノーマル/ハイレゾともに起動不可
がありましたので、使うディスプレイに合わせた配線をすればよいと思います。なおノーマル24kHz/ハイレゾ50kHzという組合わせは見付かりませんでした。ハイレゾで50kHzを出力するには、最低3本の配線をしなくてはなりませんが、よく見ると、その3本をスイッチ化すれば上記の5種類の組み合わせすべてを網羅できることになりそうです。


CRT側の場合

2007/08/02追記

 逆に、H98専用CRTをH98以外(MATE-Aなど)に繋ぐときにもマルチシンクアダプタを使います。また、制限はありますがその他の機種のWindows用ディスプレイにもできるかもしれません。要は、マルチシンクアダプタでH98用CRTに画面モードを教えてやるのです。

 調べる方法としては、先にCRT側のマルチシンク設定を行い、その設定で同期の取れるように本体側の画面モードを探すという実験になります。私はH98用CRTとしてN5926-02を用いました。これはノンインターレースCRTで、デフォルト(PC-H98-K04使用時)で31.5kHzのVGAや400ラインに同期が取れるようになっています。

 ところで、H98用CRTは画面モードの変更があるとそれに連動して同期を変えてくれますが、これを手製のマルチシンクアダプタで行おうとしてもうまく変わってくれません。普通はいったん設定した画面モードはずっとそのままですので、マルチスキャンディスプレイのように使用中に同期を変更して使うことは普通はできません。しかしH98で使う限りはそれができているのです。
 ここで、調べているうちに気付いたのですが、どうも怪しかった9番ピンはトリガの役割があるような気がします。どういうわけか9番ピンをショートしたときに10-13番ピン設定内容がCRTに反映され、その後は9番ピンを開放してもそのままなのです。うまく行けばこの9番ピン(とGND)を手元に引き出すことで、手動で切り替えられるようになるかもしれません。
 すべての組み合わせを調べるのは時間がかかりそうなので、ひとまず手元のH98用CRT(5926-02)について、VGA/400ラインとハイレゾノンインターレースに同期できる組み合わせを調べてみました。

9-13
*OOGG VGA/400ラインに同期か
*OOOG ハイレゾ(ノンインターレース)に同期か(後述のXGAで確認)

 探せばまだありそうです。とりあえず9番ピンと12番ピンを引き出し、13番ピンをショートすることで二つの周波数に同期できるようにしています。
 ただし前者(VGA)は前述のデフォルト同期と比べて全く同じ画面ではなさそうで、若干ですが右に表示がずれていました。もう少し調べる必要はありそうです。

 また、Windowsディスプレイとして使う場合、31kHzはVGAと400ラインに同期しますが、DOS/V用のBIOS画面や英語モードの31.5kHz/70Hzには同期できませんので、PC-98を使うものとして想定します。ここで、ハイレゾノンインターレースの50kHzは、どういうわけかXGA(60Hz)にも同期が取れます。しかしながら元々これは1120x750という横長画面を想定しているので、XGAの1024x768を映すと画面が横長に潰れアスペクトが狂います。また、表示位置も大きく右側にずれてしまいます。前者についてはワープロなど文字ベースの利用ならそう気にならないでしょう。後者はディスプレイドライバの表示位置調整機能に頼ることになります。それができない場合はタスクバーを右側に持っていって、タスクバーを広くして誤魔化せばどうにかサマにはなります。

 ひとまずこの状態でPC-98のWindowsディスプレイとして使用し、様子を見ています。15インチCRTなので、ただでさえ細かいXGA画面が横長に潰れて余計見難くなっています。17-21インチのH98用CRTならもう少しはマシなのかもしれません。

2008-12-31追記

私はメイン環境のSt15ではメルコSavage(32MB版)を使っていますが、Windowsディスプレイとして上記のピン組み合わせ(OOGG/OOOG)でVGA/XGAを使っていると、なぜかXGAからVGAへの復帰が失敗します。やはり「少しだけ画面の右にズレるVGA」は、普通のVGAとは違うようです。

そこでPC側(Windows)の画面モードを、リフレッシュレート60HzのVGA(640x480)と同XGA(1024x768)の2つに絞って、10〜13番ピンの状態とN5926-02に同期する画面モードを調べてみました。すると10番ピンに関係無く11-13番ピンの組み合わせで画面モードが決まっているようでした。
10	11	12	13	VGA/XGA同期	予想周波数	
x	O	O	O	VGA (横長化)	32kHz	
x	O	O	G	XGA(横長ズレ)	50kHz	
x	O	G	O	電源がダウン	不明(禁止設定?)	
x	O	G	G	VGA (小ズレ)	31kHz(?)	
x	G	O	O	VGAジャスト	31kHz	
x	G	O	G	VGA (横長化)	32kHz	
x	G	G	O	VGA (横長化)	32kHz	
x	G	G	G	VGAジャスト	31kHz	
O:オープン、G:GNDにショートとして記述しています。ここでVGAが横長画面になって同期の取れるモードは、恐らくハイレゾインターレース用の32kHz画面でしょうね。VGAジャストサイズになるのはノーマルモード用の31kHz画面だと思います。少しだけ横にズレるVGAモードもありましたが、どちらかがいわゆる31行モード用なのでしょうか? またCRTの電源が落ちる(同期が取れなくて安全装置が働いている?)ような組み合わせもありましたが、詳細は不明です。

この結果、横ズレや画面つぶれ(横長)のない普通のVGA画面は、11-13がGOOもしくはGGG(O:オープン、G:GNDにショート)のときに同期が取れるようでした。そこで11番と12番ピンをショートさせておくことで、前述のOGGの設定をGGGになるようにして以前と同じようにVGA/XGAをスイッチで切り替えています。

前述のようにXGAは映ったとしても(グラフィックドライバが画面位置を設定できない場合に)画面が右にズレて少し欠けるうえ、全体的に横長につぶれています。しかし曲がりなりにも800x600ウインドウのソフトが動くようになるというのは、普段640x480しか映らないディスプレイを使っていた者としてはちょっと便利です。

もちろんこれはN5926-02での話ですので、他のハイレゾディスプレイではどうなるか存じません。恐らくディスプレイによって違うのではないでしょうか。

2009-1-4追記

当たり前といえば当たり前なのですが、上記のようにCRT側の手動切り替えを行う場合は9番ピンはショートしたままのほうが便利かもしれません。そういう意味では9番ピンはトリガというよりも画面モード保持とか、画面モード変更許可のような意味なのかもしれませんね。

現在私がやっている、N5926-02用の画面モード変更の配線は以下のような感じです。
↓ピン番号
9: GNDにショート
10: NC
11: スイッチに繋いで手元に引き出す。
12: 11にショート
13: GNDにショート

手元の切り替えスイッチにはGNDと11番ピンだけ引き出して繋ぎ、ショート=VGA、オープン=XGAという感じです。VGA-IN端子からどうにかしてリレー状態の変更を信号線として引き出して自動切り替えとかできれば便利そうなのですが・・・まあいざという時の事を考えて、手動でよしとします。

 なお、言うまでもありませんがこうした実験は著しく機器の寿命を縮め、故障の原因となる可能性がありますので、行う場合は事故等に十分注意して自己責任で行ってください。

2018/10/26追記:オープン・ショートの表記が0・1では分かりにくいというご指摘があり、O・Gに変更いたしました。


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