*** REALmagic Hollywood PlusのVGAケーブル ***

今回はジャンクで買ったDVDデコーダボード、「REALmagic Hollywood Plus」のVGAケーブルを作成してみました。PC-98用マウス変換ケーブルを流用して・・・。


↑DVDデコーダボードは古いPCでDVD再生を行うとき便利。

DVDデコーダボードは古いPCでハードウエアMPEG・DVD再生を行うものです。ソフトウエアだけで再生するにはPenIIIクラスのマシンパワーが必要になります(ちなみにPC-9821St15+PentiumII ODPでは実用になりませんでした)ので、CPU選択の限られる機種ではDVD再生には必須となります。なお、このボードの場合はPentium133MHz程度のマシンまでDVD再生の敷居が下がるようになるとされています。

このボードは比較的メジャーな製品のようで、アイオーデータなどにもOEM供給されていました。アイオーではWin9xのドライバ提供となっていますが、本家ではNT/2k等のドライバもあるようです。

ジャンク入手での問題点

このボードはジャンク入手のためケーブル類を含めて付属品が付いていませんでした(幸いFDは付いていましたが、ウェブからも最新版がダウンロードできるようです)。このボードの用途としては2種類が考えられますが、いずれの用途でもどれか付属品が必要になります。

* 外部TV出力を利用し、古いPCをDVDプレーヤに見立てて使う。
* 古いPCでWindowsを使いながらも、サブウインドウ内でDVD鑑賞。

前者であればPC用ディスプレイやキーボード・マウスを接続せずに、WindowsのスタートアップにDVD再生アプリを組み込んでおけば家電感覚でTVにだけ繋ぎ、古いPCをDVDプレーヤとして再構築できます。しかしそのためには専用リモコンと感光部(本来は別売りだがセット製品もあったらしい)が必要になります。

後者であればVGA-INケーブルでPCの画面出力をいったんボード内に取り込んでから、ハードウエアオーバーレイであらためてそのボードからディスプレイ出力する形となります。これはPC-98のCバスGAやビデオキャプチャではよくある接続パターンですが、9821でもPCIのGAではGAの出力をPC-9821本体のCRT-IN端子に入力させるという逆の形になったため、PCIボードなのにCバスGAのようなケーブルで接続するのは珍しい気もします。話を戻しますが、REALmagic Hollywood PlusはVGA接続ケーブルが無ければ外部TV出力だけの用途になりますから、ウインドウ表示させるには別のビデオキャプチャボードで取り込んで表示させることになり、別途キャプチャソフトを立ち上げたりと操作が煩雑になるうえ、画質の劣化も激しいと思われます。

個人的には後者の用途で買ったので、VGAケーブルを自作することにしました。

VGA-INがPC-98のマウス端子と同じ!?

REALmagic Hollywood PlusのVGAケーブルは、当然ながら片方はDサブ15ピン3列(ミニDサブ15ピン)で、PCの出力コネクタに接続します。肝心のボード上のVGA-IN端子はミニDIN9ピン(メス)でした。これはPC-9821シリーズでマウスの接続端子として使われています。PC-98のCバスGAではミニDIN8ピンのケーブルが多く使われていたので、それらとケーブルの形状が似ていると思われます(余談ですがミニDIN8ピンはPC-98ではキーボード端子に使われています)。

ケーブルを自作しようとしたところ、たまたま千石電商にミニDIN9ピンプラグが無かった(ミニDIN8ピンとか、ソケット側なら有ったのですが)ので、PC-98のマウスコネクタを流用することにしました。

PC-98のマウスコネクタにはDサブ9ピンのものもあり、マウス変換アダプタや変換ケーブルが存在します。これがミニDIN9ピン〜Dサブ9ピンの全結線なので、今回はこれを利用して、Dサブ9ピン〜Dサブ15ピン3列の追加変換コネクタを作ることにしました。

なお、VGA(アナログRGB)コネクタにも普通にDサブ9ピンの規格があり、15ピンとの変換ケーブルも存在しますが、今回流用したPC-98用マウス変換アダプタや、それを15ピンに変換する自作アダプタは、それらとは互換性がありませんので、くれぐれもご注意ください。

ピンアサインの解析

これは以前、CバスGAのケーブルを作成するときにやっているので、同様の手順を踏みました。

1. まず導通を調べることで、GNDピンが特定できる。また入力と出力が直結されているピンも特定できる。
2. それらを除外し、残るピンから基板上に伸びる配線パターンを観察し、3本組、2本組になっているものがあれば、それぞれRGB、同期信号と予想できます。
3. それらをまず適当に繋いでみて、映らなければ(同期が取れていないようならば)同期信号2本を入れかえる。
4. 映ったら、表示される色をヒントにRGB線を正しく入れ替える。

という感じです。基本的に3本のRGB線と水平同期、垂直同期、それにGND線の6本が特定できれば一応映ると思われますので、8〜9ピンしかないVGA端子はピンの特定が容易です。なお今回、その他の信号も2本ありましたが、入力と出力で完全にスルーされる信号でしたので容易に解決しました。

もちろん、故障の危険性もありますので、真似する場合はくれぐれも自己責任で。

解析結果

ミニDIN9ピンのピンの数え方は、PC-98のマウスでの数え方に従いました。したがって結線においてD-sub9ピンとピン番号が同一ですのでそのまま読み替えられます。

REALmagic Hollywood PlusのVGA-IN端子

ミニDIN9ピン(メス)
98 7
6543
 21

1 - 青(VGAの3番ピン)
2 - GND
3 - 緑(VGAの2番ピン)
4 - GND
5 - 垂直同期(VGAの14番ピン)
6 - 水平同期(VGAの13番ピン)
7 - 赤(VGAの1番ピン)
8 - SDA(VGAの12番ピンにスルー)
9 - SCL(VGAの15番ピンにスルー)

REALmagic Hollywood PlusのVGAケーブル

ミニDIN9ピン(オス) ←→ VGA(Dサブ15ピン3列/ミニDサブ15ピン)
7 89  ←→  1 2 3 4 5
3456  ←→ 6 7 8 9 10
 12   ←→  11 12 13 14 15

結線不明(下記参考)

結局、現物のケーブルが無いためGNDの結線は分かりませんが、今回はとりあえずVGAコネクタにおいてそれぞれRGBのGNDである6/7/8番ピンに短絡して作ってみました。

完成



こんな感じです。マウス変換ケーブルは長さが足りないと意味がありませんので、短めのVGAケーブルと組み合わせられるようにしました。これはPC-9821のPCI接続GAに使われるGAケーブル(写真右)と組み合わせています。写真右からの、PCのディスプレイ出力端子からの短いVGAケーブル → 自作の変換ボックス → PC-98用マウス変換アダプタ → デコーダボードのVGA-IN端子、という信号の流れになります。ディスプレイはデコーダボードに繋ぎます。

誤植? (H20-5/9追記)

と、ここまで書いておいてなんですが、製品のREADME.TXTを読むと、なんとVGAケーブルのピンアサインが書いてありました(汗)。添付FDのほか、ダウンロードした英語版READMEにも書いてありました。それらを見ると、どうやら当方の解析と比べてピン番号と信号内容の対応は合っているようで、ひと安心です。



と思ったら、よく見ると何かおかしいです。READMEにはケーブル側のピン(つまりオス側)が示されており、

9 87
6543
 21

と数えています。これは前述のPC-9821マウスなどでのピンの数え方とは左右が逆です。にもかかわらず、当方の解析とピン番号〜信号内容の対応が一致しているというのはありえません。つまり、README側が誤植ではないかと考えられます。その通りにケーブルを作っても正しく動作しないでしょう。

恐らく、VGAケーブル(オス)側を示すために、ボード側(メス)のピンアサインである

98 7
6543
 21

を参考にしたのではないかと思われ、これのオス側を示すということで、間違えて同じ方向に数えてしまったのではないか、と予想されるのです(ピンの無いスペースの部分がずれてしまっていることに注意)。しかし正しくは、

7 89
3456
 12

というように、雌雄が逆になれば左右も逆に数えなければピン番号の同一性が保てません。REALmagic Hollywood Plusのケーブルを自作する際は、READMEの記述には注意する必要がありそうです。

まとめると、READMEの記述では、ピン配置の図が間違っており、ピン番号と信号内容の関係そのものは正しいと解釈できます。逆に、ピンの数え方が正しいとすれば信号内容が間違っていることになりますが、実用的には前者の解釈のほうが一般的なピンの数え方を適用できる(と思われます)ので便利でしょうね。


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