*** 電源だけ使うPCIボード用の電源変換アダプタ ***


↑汎用の4ピン電源端子にPCIエッジコネクタを変換するもの。
待機電源が使えないなど性能に劣るが、その手軽さが便利。

危険は承知で

 言うまでもありませんが、ここでは電子回路を専門としない素人の発想で話を進めており、その危険性については全くカンがありません。とりあえず動いた程度のきわめて際物アイテムの話ですので、参考にされる場合はすべてにおいて自己責任でお願いいたします。言うまでもありませんがこの記事は適宜修正される可能性もありますので記述ミス等にもご注意ください。明らかな危険性や間違いにお気付きの場合はご連絡をいただけると幸いです。

PCIスロット節約のために

 PCIボードの中には電源だけ用いるようなものがあります。PCIは今となってはそう高速でない拡張スロットかもしれませんが、拡張性を考えるとPCIをなるべく節約したいと考える人は少なくないと思います。
 この場合、汎用のPCIライザーを利用するという手もありますが、実用上は設置場所に困ることになり、PCI-6.5CMのようなPCI延長ケーブルに頼ることになります。しかしそれを作ることを考えれば、どうせなら電源専用のPCIスロットを増設してはどうか、という考えに行き着きます。
 そこで、電源を分岐してPCIコネクタに変換することを考えてみました。もちろん、これにさらにライザーを追加すれば電源だけ利用するPCIボードを複数増設することもできそうです。

実現は可能か?

 そこでまずテスタを持ってATX電源とPCIスロットを調べてみました。その結果、ピンアサイン上は(ここでは示していないので他所を検索してください)どちらも多くの電源ピンが出ていますが、基本的に同じ電圧のピンはそれぞれ導通がありました。また、電源-PCI間もマザー上で導通があります(+3.3Vを除く)。ということは、PCIスロットを使わなくても電源だけ使うPCIボードは動かせるかもしれません。そこでATX電源の延長ケーブルを改造し、市販のPCIコネクタに繋ぐ事を考えました。
 しかし、その前段階として、+12Vと+5Vだけに対応したPCIボードであれば、HDDやCD-ROMドライブに使われるデバイス汎用の4ピン電源からも分岐できそうです。大掛かりな分岐ケーブルにならずに手軽に扱えそうな魅力もあったので、まずそれを作成してみました。それがこのページの最初の写真です。

ひとまず動作

 玄人志向のIDEセキュリティボード「SE64-PCI」はPCIコネクタのパターンから+5Vしか使っていないようでした。そこで実際に試したところ、セキュリティキーを差さないとHDDが認識されなくなりましたので、その試作ケーブルで一応動作しているらしいことがわかりました。
 なお、ここで問題となるのが物理的なボードの置き場所ですが、汎用5インチベイにPCIブラケットを固定する金具を利用してみました。写真は2ブラケット用で、下の穴にSE64が固定されています。ネジ1本で固定するので強度に不安が残りますが、一応固定は可能でしたので、臨機応変に補強すれば良いと思います。

i-RAMを動かす

 上の写真では2スロットのブラケットの上段にGIGABYTEのi-RAMを載せてみました。今度はこれを動かしてみたいと思います。ただし当然ながら4ピン電源に繋ぐ限りは電源OFF時の待機電源に対応できませんから、データを保持しない、文字通りのRAMドライブ用途を想定しています。
 しかし結論から言えばそのままでは動きませんでした(充電だけ可能でしたが)。というのもi-RAMは+3.3Vを使っているのです。
 そこで+3.3Vを配線し、+5Vからダイオードを介して降圧したものを接続してみました。本来ならレギュレータか電力用オペアンプで給電したいところですが、手軽な改造で動けばその方が都合が良いので、ひとまずチャレンジです。今回、適当なダイオードが無かったので3.3Vとしてはオーバーボルテージになりしたが、どうにか動作を確認できましたので報告します。

↑5V-3.3V間をダイオードで降圧してみる(矢印の円内)

i-RAMの配線と問題

 まずi-RAMの配線ですが、パターンが伸びているピンを見る限り、+3.3VとGNDはすべて配線されています。あと+12Vと+5Vが配線されていますが、+5VはPCIスロット端の4つのピンしか配線されていませんでした。
 しかしさらに、電源以外にA14/A15ピンも使われています。PCI2.0の仕様ではA14は予約、A15はRST#(リセット)となっています。i-RAMは本来PCI2.2以降を要求しますが、恐らく待機電圧でデータを保持する機構のためですから今回は関係ないと思います。しかしA15は何らかの処理の必要がありそうです。結論から言うとA15を処理しないと、i-RAMの存在はBIOS段階で認識されますが、全くアクセスできないのでOSが全く起動できませんでした(OSは起動時にすべてのドライブにアクセスを試みるため、i-RAMにアクセスしようとしてハングする)。RST#はマザーボードから出力される、PCIクロック非同期の共通信号ですから、PCIスロットを調べれば挙動は分かりそうです。
 dorcomでMEGUMさんから寄せられた情報では、A15は電源ON後に3.3Vで落ち着くので3.3Vに接続されていればよさそうとのことです。テスタで実際にPCIスロットを調べても+3.3Vが出力されているのが分かりました。なおA14はやはり待機電力が供給されている事を示すLED(3.3V DUAL)と関わっているそうで、今回は関係無さそうです。実際、i-RAMはPCI2.2未満でも電源OFF時のデータ保持ができない事を除けば一応動きました。
 なお、パターンが伸びているピン以外をすべてテープで塞いでも動作することから、それら以外のピンが使われている心配は無さそうです。

i-RAMの動作

 そんなこんなでどうにかi-RAMの動作確認にこぎつけることができました。i-RAM上のメモリが256MBしか載せられなかったのでWindows95を入れてみましたが、さすがに速いです。ドライバの関係でDOS互換モードでしたが、インストールも起動もすこぶる快適で、最近のPCでWindows3.1を起動したかのような、あっという間の起動でした。
 しかし今回なぜか、電源を切ると簡単にデータが化けたり消えたりしました。もともと待機電源を切り捨て、文字どおり揮発RAMドライブ用途を想定していた手軽さ重視のアイテムなので、作業ファイル置き場やページングファイルでメモリ拡張に使うことを考えるとそれでも良いといえばまぁ良いのですが。あるいは、汎用の4ピン電源なのでCD-ROMドライブの外付けケースに入れて電源入れっぱなしという手もありそうです。ちょうどPCIブラケットマウンタのもうひとつのPCI穴に、SATAケーブル外出し(中入れ)ブラケットが使えそうですし。手軽であるがゆえにこんな使い方も出来そうということです。

 しかし本来i-RAMはバッテリをはずして運用できないことになっていることからもデータが消えやすかったのは少々気がかりです。理由がまだ分からないので、内部的にバッテリや何らかのハードウエアに負担が掛かって寿命を縮めていやしないのかが心配です。当たり前ですが、安定動作かどうかは今後の経過次第です。もともと危険は承知でやっていることですので、何が起きても自己責任です。

今後の展望

 とりあえずA14ピンの情報も寄せられつつあることで、ATX電源を分岐したPCIコネクタという形にすれば、待機電源対応にも応用できるかもしれませんね。

つづく

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