*** 自作CPU下駄 ***


↑ZIFレバーを持たない薄い素通し下駄は、そのままでもCPUファンを固定する時に
バネのしなり次第で、CPUソケットに直接固定できる場合があるため、
ピン短絡などの簡単な改造を、CPUを傷付けることなく行うのに便利。

初期のソケット5機やメーカーPCマザーでの倍率設定問題

 たとえばPC-98の場合でも、Pentium全盛の時代になると、マザーによってはCPU倍率の設定ジャンパを持つものが少なくなくなっていました。しかしながら、初期のPentium90機では当然そのようなものは考慮されていないうえに、ソケット5ですらなくODPがささらない機体が知られていますし、Pentium133以下の時代では1.5/2.0倍しか選択できないものが少なからず存在します。このようなマザーでは倍率の高いCPUを載せても、BFピンによる倍率設定に融通が利かず、低倍率での動作になってしまいます。
 しかし、今となっては倍率変更下駄も入手困難ですので、素通し下駄を使って、高倍率のPentiumをODP化することを考えてみました。
 ここではPC-9821V13などで使われたG8VERマザーを使っています。このマザーでは1.5/2.0倍しか選択できず、PentiumではBF0/BF1と使えるはずの倍率設定ピンのうちBF0ピンだけしか設定できないものと思われます。そこで、BF1ピンをローレベルにショートすれば2.5/3.0倍を選べるようになると考えられます。ピン配置の詳細は省きますが、ショートすべきピンはBFピンのすぐ隣にきているため、好都合です。

ピンショート時の問題

 しかしながら、BFピンの設定はマザー側で設定されている可能性があるため、そのままショートするだけでは不都合が生じる可能性があります。そこで、BFピンがマザー側のソケットに届かない(触れない)ように工夫する必要が生じます。生CPUを直接改造するとピンを折る等の元に戻せない改造になってしまいますし、絶縁の必要も生じますが、素通しCPU下駄の改造であればCPUを傷付ける心配もだいぶ減りますし、将来CPU交換の際にも汎用性があるのでそのまま適用できます。
 実際、G8VERでPentium200を使うために今回作った下駄ですが、現在ではMMXを使うためにWinChip2A-200を載せて使っています(MMX-200だとオンボードIDEが動かないため)。WinChip2といえば、1.5/2.0倍設定のPCなら直載せで高倍率運用できるという印象がありますが、さすがに200MHz版を60*3.5(210MHz)に設定してもPC-9821ではうまく動きませんでしたし、ベースを50MHzに落として使うのもどうかと思った結果、どうしてもBF1ピンをいじる必要が生じたのです。

 では、今回改造した手順を紹介していきます。私はこの手の改造は素人なので、何が起きても自己責任ですから、あらかじめご了承ください。


 ↑まず素通し下駄のピンをピン側からラジオペンチで挟み、机の角に固定して押し抜きます。


 ↑次に、取り出したピンを途中からニッパなどで短く切ります。もしジャンクなどではじめから折れているようなピンがあればためらいも無いでしょう。しかしそれでもソケットと触れないように十分短く切る必要があります。


 ↑コードに使われるより線などをほぐし、極細の銅線を得ます、それを短絡するビンの穴にはさんだ状態で、切り取り加工済みのピンを元通り植えていきます。図では両方のピンとも切り取り加工していますが、BFピンでないほうは切り取る必要は無さそうです。



 ↑装着後はマザーのソケットに届いていないかよく確認します。

 最後に、これにCPUを取り付けた際にCPUファンやヒートシンクをどうやって固定するかを検討する必要が生じますが、今回使用した下駄はごく薄いものだったせいか、元のソケットの爪に固定金具が届いたので、文字通りODPのような手軽な感覚で使用することができました。それでもCPUの厚みが2倍近くになるため、固定金具のバネのしなりの良いものを選ぶ必要があると思います。

 今回なかなかうまくいったため、同様の下駄をいくつか作れれば良かったのですが、ソケット5/7のレバーなし素通し下駄は、恐らくCPUアクセラレータに付属していたものでしょうから、ジャンクを探してもまともに魔法下駄を見つける機会のほうが多いかもしれません。特にシングルボルテージ設定を持つ下駄なら、単なる倍率設定下駄として使えるものがありますから、素通し下駄での自作はあまり意味がないかもしれません。しかし素通し下駄なら魔法下駄より格安で売られるでしょうから、安いCPUと組み合わせて自分なりのCPUアップグレードを楽しむのもアリかもしれませんね。
 なお、同様の改造は486機において、DX2をコプロ(487SX)ソケットに装着するような改造にも応用できるかもしれません。確か元の486の動作を止めてコプロソケットのプロセッサをCPUとして使うピンが487ソケット内のどこかにあった気がしますので・・・。

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