*** PC-9801VX ***


〜〜〜FDDベイの活用〜〜〜
 

↑PC-9801VX41の左半分。HDDモデルは筐体が多少横長い。


PC-9801VXとは

 PC-9801VXは1986年に最初のモデル0/2/4が発表されました。各モデルの違いはディスクドライブまわりであり、0はFDDなし、2は5インチFDDx2、4はさらに20MBのSASI-HDD内蔵です。9801Fとは違い、HDDモデルにもFDDが2基標準で用意されています。いずれもCPUには8MHzの80286と8/10MHz切替のV30を搭載し、電源投入前に切り替えて使うようになっていました。また、このころEPSONのPC-98互換機の参入があり、その対抗策として半年後には286モードでも8/10MHz切替が可能な後継モデル01/21/41が発売されました。標準でメモリ640kBを搭載し、スイッチ切替で512kBにすることも出来ました。Cバスは4基です。グラフィックは640*400*アナログ16色で、アクセラレータとしてEGC機能をはじめて搭載したため、98用ソフトでは「VX以降」というカテゴリが多く採用されました。VXはDOS/V機でいうPC-ATにも相当するような、まさに98の標準機でした。また下位機として、同じ筐体でEGCと286の機能などを省略したVM21という機種も用意されていました。

ここが玄人な機種

 VXは286をソケットで搭載しており、CPUパワーアップの融通が利くうえ、V30に切り替えられるので互換性を失うことはありません。それでいて、FDDがファイルベイのような空間に用意されている機種は純正ではVX以前のものに限られます。つまりVXはCPUパワーアップがまともに行える機種でありながら、5インチ機器を2台内蔵できる可能性を秘めた、ハードウエア的に面白い機種であると考えられます。しかし正式にはFDD専用のスロットであるため、ここにFDD以外の機器を搭載する実験は意味があると考えました。
 またCPUアップしなくとも、286マシンということで、286で出来ることと出来ないことを探してみるなどといった「遊び」もできます。ここでは触れませんが、86系CPUのアーキテクチャは186と386が良く使われたため、286プロテクトモードについては良くわからない人も多いのではないでしょうか。最新のCPUを調べて遊ぶのは意義のあることですが、遊ぶだけなら格安のジャンクでも、自分の知らない世界というのはどんどん開けてくるものです。あまり玄人でなくとも、初期のOS/2やWindows3.0が手に入れば、286プロテクトモードの環境を知ることはできるでしょうし、DOS上のメモリ環境を整備するだけでも苦労が楽しめるかもしれません。うまくやれば、仮想EMSとVCPI以外の主なものは実現できると思います。
 あとVXで面白いのは、VM21とグラフィックボードやCPUボードに互換性がある点です。私のやったところ、XL^2のハイレゾボードとも互換性がありそうでしたが、物理的にVXへの装着は出来ません(逆は出来た)。なおVXのEGCボードは、最初のEGCであるせいか、挙動がその後のEGCと異なる場合もあるそうなので注意しておく必要がありそうです。後期モデルVX01/21/41では大丈夫だそうです。

まずはCPU

 VXのCPUのソケットでは、ロットによりSQFPとPGAが混在している点で注意が必要です。VXに対応したCPUアクセラレータは、これらに合わせ二種類が製造されたものもありますが、変換下駄で対応する製品が多かったと思います。最後のものはアイオーデータのPK-X486SQ-Lで、実に1999年ごろのカタログまで載っていました。メルコからも同じスペックの製品が出てました。これはIBM486SLC2-50MHzを搭載したもので、ソフマップが準PBとして販売したSusteenのWinMaster50iにも採用されていた、外部16ビット長のCPUとしては最速な部類のCPUです。外部16ビットのうえ、286ベース機はCバスメモリが一般的だったためにメモリパフォーマンスの問題があるため、内部キャッシュはDX4なみの16KBを搭載し、補っています。一般的にはDX2-40MHz程度の実力と言わますが、小さなプログラムを動かす分にはCPUキャッシュが効率的に働き、本物の486に匹敵するパフォーマンスを発揮する一方、Windowsのようなでかいプログラムでは途端に遅くなります。特にCx486SLCを搭載した倍速アクセラレータなどではCPUキャッシュが1KBしか用意されないので、DOSでの使用をメインにするのが無難ですが、もちろんWindowsも3.xなら一応動きますので、実用はともかくジャンク弄りとしてそこそこ遊べます。もちろんテキストエディタなどの軽い用途を見つけて実用するもまた楽し。
 286マザーのハード構造は、386/486とはかなり違うらしく、プロテクトメモリ管理もハードウエアレベルで異なっているようです。CPUを換えてそのままでは、HIMEM.SYSがA20をディセーブルに出来ないと警告してきますので、基本的にはアクセラレータに付属のメモリマネージャをドライバ登録します。ジャンクの場合は入手が困難かもしれませんが、MemoryServerやMelwareなど、ほかの製品についていたFDにも同じものが入っている場合がありますので、オンラインDOCかインストーラの説明を注意して見れば、CPUアクセラレータとの併用設定が見つかるかもしれません。なお、仮想86メモリマネージャを介さずCPUキャッシュを設定する必要がある場合は、CPUごとにフリーソフトを探すことになりますが、特にサイリックスとその互換品であれば見つかると思います。今回用いたCPUアクセラレータはABMの486GT-Rで、Cx486SLCを搭載した倍速のものですが、説明書を見ると、HIMEM.SYSをそのまま使い、警告は無視するように指定されていたのですが、HIMEM.SYSの新しいバージョン(Windows95に付属のものなど)は、この警告が出るとHIMEM.SYSが常駐しないように仕様変更されたようです。文句を言おうにもABMはもうありませんので、ここは大人しくDOS付属のHIMEM.SYSか、ほかのメモリマネージャに頼るしかなさそうです。なおCPUに合わせたコプロセッサも必要になりますが、これはCPUアクセラレータ上にソケットを用意するか、直付けされているものが一般的です。486GT-Rにはコプロそのもののソケットではなく、専用の387コプロセッサボードを取り付けるソケットがありますが、今回入手できませんでした。そこで本来の287ソケットに287を取り付ける実験もしてみました。この場合、マザー上のジャンパピンをコプロ有効に設定します。CPUアクセラレータの387を使う場合はコプロ無効に設定します。一方メモリスイッチは、どちらの場合もコプロ使用の設定です。CPUやコプロのチェックソフトをいくつか走らせてみましたが、コプロ異常になるものと、ちゃんと287として認識するものがありました。本来386自体の仕様では287がサポートされていたはずですが、どうやらPC-98の世界では、ソフト的にそのような組み合わせは想定されていないのではないかと思いました。だとすれば、287が使えるかどうかはソフト次第、ということになりますが、本格的にコプロを使うソフトをあまり持っていないので、詳しい確認はしていません。

FDDベイの活用

 さてVX以前の機種は、RA2以降の機種とは違い、内蔵5インチFDDにベゼルがついており、ファイルベイのような空間に固定されています。実際、FDDなしのフレームモデルではこの空間にダミーボックスが内蔵されており、別売りのFDDを取り付けられるようになっています。これはすなわち、内部にIDEかSCSI端子を用意すれば、ファイルベイとして使えるのではないかと考えられます。私は、そのダミーFDDボックスをXa7のファイルベイカバーとして用いていたこともあるくらいです。ちょっときつめでしたが。そんなわけでここでは、あまり使うことの無くなった5インチFDD用のベイを、ファイルベイとしての活用法を探ってみました。なお注意点として、ここに5インチ機器を内蔵する際には、片側のネジしか直接固定が出来ません。片側固定だけでもそこそこの常用には問題はなさそうですが、反対側の固定には専用金具が要ります。これは標準装備のFDDに付いていますので、FDDを外したら忘れずにとっておきましょう。
 余談ですが、この頃の5インチFDDはFA以降のものとはコネクタの形状が異なりますが、ピン数は同じで信号内容的にも互換性があるようで、変換コネクタを介せば本物のファイルベイ機種(BX3)でも動作が確認できました。ただしFDDユニットのジャンパ設定によっては動かないこともあるようですので、その設定がわからないことには、賭けになるかもしれませんのでご注意ください。
 まずはFDD内蔵について考えてみました。もともとFDD用のスペースであり、追加するインターフェースなしで増設できると考えられます。そこで3.5/5インチ両用機にしてみることを考え、UXからとった3.5インチFDD(FD1137D)を、市販のFDDマウンタに入れて内蔵してみました。5インチFDDとはコネクタ形状が違いますが、おそらく市販の変換コネクタで対応できるのではないでしょうか。しかし、結論から言うとこれは失敗でした。FDDの一台目、二台目の設定にかかわらず、なぜか正常に動作しませんでした。互換性があると考えていたハードウエアが、実は微妙に違っていたようです。FDDのジャンパ設定がもう少し詳しくわかるとヒントになったかと思うのですが、結局のところわかりませんでした。とりあえず一基で使う分にはいいかと思うのですが、まだ検討の余地がありそうです。
 また、HDDモデルにはSASIボードが内蔵されていますが、これをFDDモデルに移殖しても、スペースの都合で肝心のHDドライブを内蔵できそうにありません。VX以前のHDDモデルはFDDモデルよりも筐体が大きかったのです。そのような場合に、FDDベイにSASI-HDDを内蔵させるということも考えられそうです。
 次に、VXのFDDスペースをファイルベイとして使うからには、内部にIDEかSCSIは欲しいところです。VXにはCバスしか拡張手段が無く、HDD内蔵モデルでは専用スロットにSASIボードが装着されているだけなので、Cバスを介して増設することになります。まずIDEボードして比較的入手しやすいものにアイオーデータのIDE-98があります。しかしこれは486以降の特定の機種にしか対応していません。DAなど386ベース機でも動作報告はありますが、XL^2などで轟沈報告も挙がっています。私の試したところ、286機(RX51)でもCPUアクセラレータで386以上を搭載すれば動くようですが、RA2では確保したはずの領域が見えず、使えませんでしたので、このあたりに線引きがありそうです。ただこれらの遅い機種では起動にかなりの時間が掛かり、またソフトウエアリセットがうまくいかないこともあるようですので、今回は見送るほうが良さそうです。
 結局CバスSCSIを利用することにしました。基本的には外付けコネクタからの信号を筐体内部まで引き回すことになりますが、もしCバスが余っているなら、AT用のSCSIスルーコネクタを用い、CバスSCSIのプラケットか、玄人のCbus-HENKANに取り付けるのもいいかもしれません。もちろん、フラットケーブルをCバス間の隙間や筐体と天板の隙間に通すことも出来ます。今回はファイルベイらしい使い方を目指してみるということで、某道場の記事でも話題にありましたが、ボード上に50ピンフラットケーブルを取り付けられるCバスSCSIボードを手に入れたので、これを使ってみました。

CバスSCSIによるドライブの内蔵

 ボード上にSCSIB55IIIと表記がありましたが、メーカーは良くわかりません。ただ、外出しコネクタがフルピッチであること以外は、某道場の記事に載っていたコニックのボードの写真とよく似ています。PC-FXGAの動画再生でエラーを起こすことから、同じようにDMA転送であると推察されました。ボード上のターミネータを無効にする設定はわかりませんでしたので、内蔵機器だけで運用します。試しに内外両方にSCSI機器をつないでみましたが、不安定でした。また内蔵機器だけで運用する場合、外付けコネクタにターミネータを取り付けると不安定になるか、BIOS段階で起動しなくなるようですので、やめておいたほうがよさそうです。
 ベース機がVXということで、CPUをパワーアップしてもOSとしてはDOSおよびWindows3.xがターゲットとなります。これらを利用する上で、必要になるハードウエアとして、やはりHDDとCD-ROMがあります。これらを内蔵することで、2つのベイは埋まります。3.5インチFDDも内蔵できると便利なのですが、外付けでも場所を取らないのでFDDは外付けにすることにしました。もしVX本体がHDDモデルなら内蔵HDDスペースがあるので、FDDとCD-ROMドライブを内蔵できるでしょう。最近はスリムCDと3.5インチデバイスを両方合わせてひとつのベイに内蔵するための枠も出回っているようですが、まだジャンクでは見ないので、工作が得意な人はプラスチック製のマウンタを加工して作っても良いかもしれません。今回は、せっかく3.5インチHDDで5インチベイを占拠するということで、リムーバブルケースに入れてみました。
 実際にCD-ROMドライブとHDDリムーバブルケースを内蔵すると、ドライブ背面が電源とかなり近くなることがあり、電源ケーブルやフラットケーブルがうまく挿せないことがあるので、なるべく奥行きの長くないドライブ類を選ぶ必要がありそうです。実は今回、撮影の都合でIDE用のリムーバブルケースを用意してしまったということもあり、リムーバブルユニット背面コネクタからではなく、HDDドライブそのものにSCSIフラットケーブルをつなぎましたが、これでも一応使えています。SCSIフラットケーブルで内部を引き回し、最後に内部ターミネータをつなぎます。今回は、HDD基板のソケットに抵抗を挿しました。なお、CD-ROMドライブはMACからとったキャディ式の倍速です。

古いSCSI-HDDと古いSCSIボードの組み合わせに注意

 さてジャンクHDDを内蔵するにあたり、今回用いたSCSIボードがDMA転送の古いものということで、HDDを正しく認識できない場合があることは注意すべきでしょう。これはSCSIボードがいわゆるマルチベンダに対応していないためで、他社製のHDDのフォーマットを正しく判断できないほか、HDDの全容量の取得法までもが各社ごとにばらばらだったためです。今回は富士通製の40MBのHDDを用いましたが、まず認識した容量がでたらめでした。実際より少なく認識した場合は、誰でも損した気がしますが、実はラッキーです。認識しただけ使えるのですから。逆に実際より多く認識してしまうと、初期化中にエラーを起こしてまったく使えないことがあるからです。運良く初期化できても、正しく読み書きできないことがあります。しかし、何度かDISKINITやFORMATの「装置全体の初期化」をいろいろなSCSIボードで試していると、それなりの容量を認識できるようになることがあります。今回はそれで約40MBをフォーマットすることが出来ました。詳しい方は、SCCTLなどのSCSIコマンドツールを使ってみるのも手です。ただこの場合でも、ほかのSCSIボードにつなぎなおしたときにそのまま使えるわけではなく、その都度フォーマットする必要が生じる場合もありますので、ご注意ください。

その他の環境

 VXではメモリはCバスでしか増設できませんので、メルコのEMJシリーズから6MBのものを選びました。もちろんすべてプロテクトメモリに設定しています。一般にCバスメモリを搭載してWindowsを使う場合は、低位の高速メモリをWindowsに割り当てる工夫が要りますが、VXの場合は専用の高速プロテクトメモリは存在しないので深く考える必要はありません。サウンドはDOSでも使える26K互換のものにしました。もちろん86でもかまいませんが、DOSゲーム用の需要から、ジャンク市場で86はまだ高いか、安くてもすぐ売れてしまうようです。また、Win3.1までがターゲットということで、Win95では対応していない26K音源ボードの延命にもなります。あと利点として、VXには内部接続端子がありますので、26K/73サウンドボードの出力は、内部スピーカーのBEEP音と一緒にまとめることが出来ます。アタリ仕様のジョイスディック端子が2つ付くというのもあります。これはWindowsには対応しませんが、音源チップから信号線を引き出して自作してもせいぜい1ポートしか作れないようなので、2ポート使えるのは利点と考えられます。グラフィックボードには、Windows3.1標準対応の観点から、純正のウインドウアクセラレータボードBを使っていました。これはS3の928を世界に先駆けて採用したチップであり、また純正GAとして、DirectXドライバが更新され続けたため、CバスGAの中ではかなり高速な部類になります。しかしVXで使う分には、もちろんDirectXドライバは関係ありませんし、その速度はあまり生かされていないようでした。また、VRAMは1MBですが、なぜか256色しか出せませんのでご注意ください。(ちなみにうちではベンチ専用GAと化しています)

↑パワーアップしたVX21の雄姿。全体をお見せできないのが残念です。


 結局、CPUアクセラレータとの相性か、ときどきHDDが不安定になることがあったために、常用までには至りませんでしたが。もともと保証外ですし、SCSIの内部ドライブ間の距離もあまり考えていなかったので仕方の無いところでしょう。結論として、CバスSCSIに内部増設の場合は、一台だけにするというのが良さそうです。FDD+HDD、あるいはHDDは内部SASIを活用し、SCSIはCD-ROMだけにする、などです。
 しかしながら、特筆すべきはそのフォルムでした。もともと直線的で格好良いデザインでしたし、比較的汚れも少なかったのですが、ドライブ部が真っ白になり、CDやHDDケースを内蔵すると、まるで最新のWindowsマシンかという錯覚すら受けるようでした。そう、とてもDOSベースの98だとは思えないインテリ感を感じます。某98のメモリ活用本の一節に、VM2について「バケツをひっくり返したようなダサさと例える口さがない友人」の話がありましたが、後継のVM21と同じデザインの本機をそんな人に見せたらどう思うか、などと考える次第でした。


KAZZEZ

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